2023.03.17
現在、医療分野の「デジタル化」の必要性が急速に高まりつつあり、さまざまな医療機関でデジタル技術・システムの導入が進んでいます。
院内業務のデジタル化により、医師や看護師、職員の業務負担軽減や業務効率化に加えて、患者により良い医療環境を提供することが可能です。一方で、「医療デジタル化の具体例が分からない」「導入コストなどのデメリットが気になる」というのも実情でしょう。
本記事では、医療デジタル化の概要や歴史などの基礎知識に加えて、デジタル化の具体例やメリット・デメリットについて解説します。
目次
医療の「デジタル化」とは、医療現場にデジタル技術を導入し、患者・医療従事者の双方により良い環境を提供するための取り組みです。
まずは医療のデジタル化について、以下の2つの観点から見ていきましょう。
医療のデジタル化は、これまでアナログで行っていた業務に、デジタル技術を導入することを意味します。例えば、電子カルテシステムやWeb予約システムの導入、医療データの活用などです。デジタル技術の活用により、医療従事者の業務負担が減って効率化を図れるうえに、患者にとっても便利な医療を提供できるようになります。
デジタル化は「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の第一歩です。医療DXの最終的な目標は、デジタル技術で医療現場のさまざまな業務を革新し、患者と医療従事者双方により良い環境を提供することにあります。
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医療のデジタル化の歴史は、比較的早い時期から始まっています。1980年代には、診療報酬請求業務の効率化のために、レセプトコンピューター(レセコン)が普及し始めました。
1990年代になると電子カルテが登場し、1999年には当時の厚生省が電子カルテのガイドラインを作成しました。2000年に政府が「IT基本戦略」を発表、世界的なデジタル化・IT化の流れが始まります。
参考:『医療情報のデジタル化における現状と課題 ― 日本における経緯と国際比較 ― 』(日本医師会総合政策研究機構 リサーチレポートNo.124)
それ以降、医療現場におけるデジタル化は加速しています。例えば、厚生労働省の調査によると、2020年時点での電子カルテシステムの一般病院での普及率は57.2%です。2008年の14.2%と比べると12年間で4倍になっており、デジタル化が進んでいます。
電子カルテシステムなどは普及しつつあるものの、全体的な医療現場のデジタル化の推進状況は、諸外国と比べると後れをとっています。その理由について、以下の2つの観点から解説します。
現在のところ、各医療機関同士など広い範囲で医療情報を共有できるような、体制やプラットフォームが整っていません。つまり、たとえ1カ所の医療機関にITシステムを導入したとしても、情報を最大限に活用するのが難しいということです。例えば、大学附属病院や地域中核病院など大きな医療機関でも、診療情報共有のプラットフォーム機能を果たしているところは皆無だと言えます。
こうした現状を解消するために、2022年に政府は「医療DX令和ビジョン2030」を発表し、医療デジタル化の推進を打ち出しました。提言の大きな要素の一つが「全国医療情報プラットフォーム」で、さまざまな医療機関で情報を共有できる体制を構築するとしています。情報共有がスムーズに行えることで、医療のデジタル化によるメリットも享受しやすくなるでしょう。
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現在の日本の医療制度は、健康保険事業を運営する「保険者」と、医療機関が対立する構造になっています。医療のデジタル化・DXで経済的メリットを最初に享受するのは保険者ですが、ITシステムなどの導入コストを負担するのは医療機関です。そのため、医療機関としてはデジタル化に踏み切れない面もあると言えるでしょう。
政府は「医療DX令和ビジョン2030」において、医療機関もデジタル化で経済的メリットを得やすいように「診療報酬改定DX」を進めるとしています。
医療のデジタル化の具体例として、代表的な以下の5つを紹介しましょう。それぞれの概要をメリットと併せて詳しく解説します。
電子カルテは、紙で作成・管理していたカルテをデジタルデータ化し、情報の一元管理・編集・検索が効率的にできるシステムです。カルテを紙からデジタルに移行すると、以下のようなメリットが得られます。
特に利便性が高いのが患者情報を取得したいときです。電子カルテなら、検索機能で情報をすぐ取得できるため、カルテを探す時間と手間がかかりません。また、紙のカルテは手書きの字が読みにくいこともありますが、電子カルテは誰が見ても読みやすい書類が作れるので、誤読や記載ミスの軽減にも効果的です。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により「オンライン化」の重要性が高まったことで、オンライン診療やオンライン問診票の導入が進みました。
こうしたオンライン化のメリットは、対面診療や不要不急の外出を避けて感染症の感染・拡大リスクを軽減できることや、患者の待ち時間を短縮できることです。また、オンライン診療の導入により、遠隔地の患者にも柔軟な医療を提供できます。オンライン問診票と電子カルテを連携させれば、転記作業をする手間が軽減できます。
このように、医療のデジタル化によるオンライン化のメリットは計り知れません。
「クラウド化」は、電子カルテなどのデータをインターネット上のサーバー、つまりクラウド上に保存する仕組みです。そのため、BCP(事業継続計画)対策の観点でも大きな効果があります。
紙媒体のカルテは、紙がダメージを受けるとすべての情報が失われます。しかし、クラウド化をすると、万が一、病院が災害に巻き込まれた場合でもデータはクラウドサーバー上にあるため、重要なデータを失うリスクが低くなるでしょう。
デジタル化の推進により、医療機関同士でさまざまな情報を共有できるため、患者に柔軟かつ適切な医療を提供しやすくなります。例えば、患者の都合でかかりつけ医にかかれない場合でも、患者情報の柔軟な共有が可能です。情報不足による医療のエラーを防げるため、「どこでも適切な医療が受けられる」という患者の安心感につながります。
スマートフォンやタブレットなどのデバイスを活用した「予防医療」も可能です。予防医療とは、疾病リスクを低減するために、日ごろから食事管理や運動などを行うことです。デジタル技術の活用により、離れた場所からでも非対面で保健指導など患者の健康管理ができるため、健康に対する患者のニーズを満たしやすくなるでしょう。
医療のデジタル化を進める際はデメリットもあります。以下の4つの課題には注意が必要です。
医療デジタル化の中心となるのが電子カルテです。大病院へ電子カルテを導入する場合、対象の病院規模、諸条件にもよりますが、初年度に数千万円から数億円以上の費用が目安となります。
導入するITシステムによっては、機能が豊富・複雑などの理由から、すぐに使いこなせず定着に時間がかかることがあります。医療従事者のITリテラシーによっては、研修が必要なこともあるでしょう。
ITシステムやツールは、使いこなすほどデータが蓄積し、業務効率化の効果が高まる傾向があります。そのため、院内にITシステムが浸透しデジタル化の効果を実感するまでには、ある程度の時間を要する場合もあります。
ITシステムは稼働に電力が必要なので、停電時や電力供給が不安定ときはシステムを正常に活用できません。電子カルテや診療予約システムが使えなくなると、業務に大きな悪影響が出て患者満足度の低下にもつながります。
そのため、万が一のときも安定して医療を提供できるように、紙媒体のカルテなどでも対応できるように準備しておくといったリスクヘッジも重要です。
医療現場をデジタル化すると、あらゆる情報をシステム上で管理することになります。一方、情報の閲覧や共有がしやすいということは、その過程で情報漏洩のリスクもあるということです。
そのため、セキュリティ対策が堅牢なシステムを選ぶことが重要です。また、院内スタッフに対して、安全な情報管理を徹底するための研修を行う必要もあるでしょう。
医療のデジタル化により、業務効率化はもちろん、患者により良い医療を柔軟に提供するための環境を構築できます。政府が推し進める政策により、今後さらに医療のデジタル化・DXの流れは加速することでしょう。
医療分野のデジタル化を進めるには、自院に適したシステムを導入することが大切です。大病院向け業務効率化システム『ARTERIA』(アルテリア)なら国内全ての電子カルテと連携可能であり、院内文書のペーパーレス化、問診システム、Web予約などの機能を備えています。
既存の業務フローを変更することなく導入でき、業務効率化を図れます。医療のデジタル化・DXでお悩みの場合はぜひご相談ください。
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