2023.09.07

【病院・医療機関】RPA導入メリットを解説!業務効率化事例

【病院・医療機関】RPA導入メリットを解説!業務効率化事例

コンピューター上の作業を自動化できる「RPA」は、現在さまざまな分野で導入が進んでいます。病院・医業機関でも、人手不足や働き方改革への対策としてRPA導入が進みはじめ、業務効率化や労働時間削減の効果が注目されています。

そこで本記事では、「RPAとはどのようなものか」といった基礎知識をはじめ、医療現場におけるRPA導入のメリット、適用できる業務などについて解説します。

病院・医療機関で推進されている「RPA」の導入

はじめに、「RPAとはどのようなものなのか」の基礎知識と、医療現場における活用概要について見ていきましょう。

そもそも「RPA」とは?

「RPA」は、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、コンピューターを使って人が行っている定型業務を自動化する仕組みのことです。RPAは「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」とも呼ばれ、定型化が可能な作業であれば、24時間365日稼働させ続けることができます。

RPAが機能を発揮できるのは、あくまでパターン化できるルーティンワーク(定型業務)です。AI(人工知能)のようにコンピューターが自己学習して進化することはできないため、柔軟性や高度な判断が必要な業務には対応できません。しかし、限られた経営資源である人材を単純作業から解放し、コア事業や重要業務へ集中させる経営改善施策の一つとして注目されています。

これまで人が手作業で行っていた業務をRPAに置き換えることで、業務効率化と負担軽減が実現できます。例えば、取引先からの請求や売上を管理する際、紙やPDFの帳票をスキャンしてデジタルデータ化し、指定した帳簿システムへ転記したり、請求書を作成・メール送信したりする作業の自動化が可能です。人手不足に対応する手段として、さまざまな業界で注目を集めています。

病院・医療機関には自動化できる業務が多い

病院・医療機関では、人事総務部門、医事会計部門、財務経理部門、看護部門などあらゆる部門で多くの事務処理が行われています。その中には、RPAによる自動化が可能な定型業務があります。パターン化できる業務を自動化することで、職員の負担を軽減し、時間と人的リソースをより重要な業務に集中できるようになります。

また、人間による業務ではヒューマンエラーが発生する可能性がありますが、RPAはプログラムに従って確実な作業を行います。データの入力ミスや処方箋の誤りなどを未然に防ぐことができるため、業務の正確性が向上します。これにより、医療の質を高め、安全性を確保することにもつながります。

RPAで自動化できる作業のポイント

RPAで自動化できるのは、主にパターン化できるルーティンワーク(定型業務)です。医療現場においても、以下のような作業ポイントを洗い出すことで、自動化可能な対象業務をイメージしやすくなります。

<RPAで自動化できる主な作業>

  • データ検索やデータ抽出
  • データ転記
  • データ集計
  • 抽出したデータや指定ルールに基づく文書作成
  • データ照合
  • 計算ミスや転記ミスなどのチェック
  • 請求書などの各種帳票作成
  • 集計したデータに基づく分析レポートの作成

上記の作業ポイントを医療現場に当てはめると、例えば、レセプト(診断報酬明細書)のデータ入力やチェック業務を自動化できます。また、患者の検査データを取得して電子カルテへ入力する転記作業、患者の入退院手続き・病室の医療機材管理・病室の清掃業務などの病床管理にも活用できます。

RPAは固定化されたプログラムではなく、自院の状況に合わせてカスタマイズが可能な点が最大の特徴です。また、上記のような作業を組み合わせることで、複雑な業務にも対応させられます。現在、プログラムの専門知識も不要で、医療分野に特化したさまざまなRPAツール・ソリューションが提供されています。

病院・医療機関にRPAを導入すべき理由・背景

病院・医療機関にRPAを導入すべき理由・背景として、以下の3つが挙げられます。

  • 医師や看護師など医療従事者が不足している
  • 医師の「働き方改革」が2024年4月に始まる
  • 医療DXの推進が求められている

医師や看護師など医療従事者が不足している

先述したように、医療現場における医師や看護師など医療従事者の不足が懸念されています。生産年齢人口の急速な減少をはじめ、医療ニーズの多様化、担い手の医師や看護師の高齢化、過酷な労働環境による離職・退職などが背景にあります。

言うまでもなく医療は高度な労働集約型産業で、医師や看護師などの国家資格者によって支えられています。こうした医療従事者の限られたリソースが、本来の業務以外に圧迫されているという実態があります。そこで、院内業務にRPAを導入することで、医師や看護師が関わる一部業務を自動化し、本来の業務に集中できる環境を整えることが求められています。

医師の「働き方改革」が2024年4月に始まる

2024年4月から医師の「働き方改革」が始まります。これは、医療現場の過重労働を改善し、働きやすい医療環境を実現するための取り組みです。

厚生労働省の「ワーキンググループ資料」によると、病院の常勤医師のうち約4割が年960時間以上、約1割が1,860時間以上の時間外・休日労働を行っています。つまり、これまでの医療現場は「医師や看護師の長時間労働によって支えられてきた」側面があるということです。

しかし、前述した医療従事者の人材不足の深刻化により、こうした労働環境はもはや成り立ちません。医師・医療従事者の働き方改革を実現し、長時間労働を改善するためには業務効率化が欠かせません。そこで注目を集めているのが定型業務を自動化できるRPAなのです。

医師や医療従事者の「働き方改革」の概要については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

■関連記事
医療現場・医療従事者(医師・看護師・薬剤師・事務職員など)の働き方改革とは?ポイント解説

■参考サイト
良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(第31回地域医療構想に関するワーキンググループ)[厚生労働省]

医療DXの推進が求められている

医療業界で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が推進されていることも、RPAが注目されている理由の一つです。そもそもDXとは、企業がビジネス環境の変化に対応し、デジタル技術とデータを駆使してビジネスモデルの変革を目指す取り組みを指します。

医療DXを実現するための効果的な手段が、病院・医療機関へのRPA導入です。パターン化できる事務作業を自動化することで労働環境を改善し、より良質な医療サービスを提供できる環境をつくることは、まさに「医療業界の刷新」だといえるでしょう。

医療DXについては、以下の記事で国の取り組み指針を解説していますのでご覧ください。

■関連記事
「医療DX令和ビジョン2030」とは?3つの骨格のポイントを解説

病院・医療機関にRPAを導入するメリット・効果

ここからは、病院・医療機関にRPAを導入することで期待できる主なメリット・効果について解説します。

  • スタッフの業務負担を軽減できる
  • ヒューマンエラーを防ぎやすくなる
  • 人件費(人的リソース)のコスト削減につながる

スタッフの業務負担を軽減できる

RPAの導入による最大のメリットは、医療従事者の業務負担の軽減です。

医療現場では、医師や看護師、薬剤師、助産師、診療放射線技師などの国家資格者が法律で定められた業務を医療現場で行っていますが、資格保有者でなくても対応可能なタスクは多数あります。医師や看護師の指示を受けて事務的サポートをする医療クラークを配置することも一つの解決策ですが、人材確保やコスト面が課題となることがあります。

こうした課題を解決する手段としてRPAを導入すれば、電子カルテ入力や医療文書作成などの事務作業を自動化できます。初めに作業ルールをRPAに設定する必要はありますが、それ以降は、ルール変更がない限り、継続して正確な作業を進めてくれるので人材確保の心配もありません。

少し古いデータですが厚生労働省が発表した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」によると、医師は1日に、医療記録(電子カルテの記載)に93分、医療事務(診断書などの文書作成、予約業務)に36分の時間を費やしています。RPAによる自動化を実現すれば、この時間の一部または多くを削減でき、時間的な余裕が生まれるといえます。

■参考サイト
医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会)[厚生労働省]

ヒューマンエラーを防ぎやすくなる

病院・医療機関では、カルテの入力・転記や医薬品の処方など、繰り返し行われる作業が無数にあります。これらを手作業で行うと、どうしてもミスが発生してしまうものです。過重労働で医療従事者のリソースが圧迫されている場合は、なおさらのことでしょう。しかし、医療現場ではわずかなミスでも重大事故につながりかねないため、人為的ミスの予防は極めて重要です。

RPAはコンピューターシステムなので、同じ作業をいくらでも続けられます。正確かつ高速に膨大なルーティンワークに対応でき、医療従事者の身体的・精神的負担を軽減しながら、業務の品質を高めることができます。医師や看護師などが重要な判断業務に集中できるようになり、医療の質が向上することが期待されます。

人件費(人的リソース)のコスト削減につながる

RPAの導入により、さまざまな業務プロセスを自動化できるため、従来よりも少ない人的リソースで同じ業務量をこなせるようになります。例えば、予約受付や医療記録の作成・管理などの業務の一部を自動化できれば、スタッフの人員配置を見直すこともできるでしょう。その結果、コスト削減が実現し、経営の最適化にも貢献します。

病院・医療機関でRPAを使って自動化できる対象業務

病院・医療機関におけるRPAの対象業務について、以下の5つに分けて見ていきましょう。

  • 医療書類の作成業務
  • 医薬品の管理業務
  • 医療事務
  • 人事・労務業務
  • 経理業務

医療書類の作成業務

電子カルテ、処方箋、紹介状などの医療書類のデータ入力・転記・作成業務は、RPAで自動化が可能です。具体的には、登録された患者情報や診療情報から、診療報告書や処方箋などを自動生成することなどです。これらの患者情報をデータベース化することで、次回の診療に活用して業務の効率化も図れます。

また、検査結果の記録・確認・分析にもRPAが役立ちます。検査結果から必要なデータを抽出してファイルにまとめたり、異常値の検出時の処置を自動的に選択したりすることなどが可能です。さらに、追加の検査内容の決定や予約まで自動化することや、統計データに活用することもできます。

医薬品の管理業務

RPAは医薬関連の業務にも活用できます。医薬品の管理では、入出庫管理や期限管理など正確さが求められます。RPAの導入により、医薬品の在庫数を自動更新して発注の必要性を判断したり、文書をスキャンして医薬品情報を転記したりすることができます。

医療事務

受付業務における患者情報の入力や再診の判断、予約業務における変更やキャンセルなどの業務をRPAで自動化できます。また、病院や医療機関が保険者にレセプトを送付する際は、フォーマットに従ったデータ入力が求められます。電子カルテなどから必要なデータを抽出し、レセプト用にフォーマット化して自動入力するといった複雑な業務も、RPAで対応することが可能です。

人事・労務業務

勤怠管理など人事・労務の分野もRPAで自動化できます。例えば、スタッフの労働時間などの勤怠情報を管理し、労働時間や法定休日出勤のチェック、人事考課表の自動作成や本人へのメール送付など、さまざまな業務をRPAに任せることができます。

経理業務

病院・医療機関における、受注書や請求書など各種帳票の自動作成や各種レポートの作成など、経理業務もRPAで自動化できます。データ入力や書類の読み取り、計算処理に加えて、財務報告書の作成なども行うことができます。

経理業務は、毎月あるいは決算期などの繁忙期に業務が集中しますが、自動化できる作業をRPAに任せることで経理担当者の手作業が軽減され、財務分析や財務戦略の立案などにより多くの時間を割くことが可能になります。

病院・医療機関にRPAを導入する際の注意点・ポイント

病院・医療機関にRPAを導入する際は、以下のような注意点・ポイントがあります。

  • 自動化する医療業務を洗い出す
  • 適切なシナリオや運用体制を整える

自動化する院内業務を洗い出す

前述したように、RPAはさまざまな業務に適用できますが、あくまでパターン化されたルーティンワーク(定型業務)でなければ自動化できません。そのため、コンピューターで対応できるように、現在の院内業務を細かく洗い出し、業務プロセスを整理する必要があります。一見、複雑な業務プロセスでも、タスクごとに分解してみると、自動化できる余地が見つけられる可能性があります。

適切なシナリオや運用体制を整える

RPAは事前に人が指示した作業を自動化できますが、その設定内容に誤りがあれば動作に不具合が生じます。そのため、これまで人が行っていた手順を正確に「シナリオ」としてRPAに設定したり、トラブル発生時にすぐ対応できるような運用体制を整えたりすることが大切です。

また、担当者の異動時などにも、スムーズに業務を引き継げるようにすることも必要になります。さらに、RPAの効果を最大限に引き出すためには、継続的なモニタリングと改善を行って、シナリオや運用体制を最適化することが重要です。

医療DXの第一歩として『ARTERIA』がおすすめ

病院・医療機関にRPAを導入すると、医療従事者の業務負担を軽減でき、ヒューマンエラーの予防や質の高い医療サービスの提供にもつながります。

ただ、今回解説したように、RPAの導入には業務フロー全体の整理が必要となり、現状分析や導入手順などにそれなりの検討時間を要します。そこでおすすめなのが、既存プロセスを変えずに導入できる業務効率化のためのシステムです。

WorkVisionの病院業務の効率化システム『ARTERIA』(アルテリア)は、医療のデジタル化や効率化に最適のシステムです。問診票や同意書など院内文書のペーパレス化(電子化)診療予約のオンライン化など豊富な機能を備えており、既存の業務プロセスを変えずに導入できます。医療DXの一環として、この機会にぜひ導入をご検討ください。

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