2022.04.13
ほかの産業分野と比較して、医療分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)はあまり進んでいないのが現状です。たとえば、患者データの活用に欠かせない電子カルテシステムの導入率は、2019年の時点で46.7%にとどまります。[注1]
業務効率化や医療サービスの向上を実現するため、医療DXの基盤となるITシステムの導入は必要不可欠です。
この記事では、医療DXの定義や推進するメリット、解決すべき課題について説明します。
目次
データやデジタル技術を活用し、既存のビジネスモデルを変革することを「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼びます。しかし、医療とDXを組み合わせた「医療DX」は比較的新しい言葉であり、医療業界ではあまり浸透していません。
ここでは、経済産業省や厚生労働省の考え方をもとにして、医療DXという言葉の意味について解説します。
まず、経済産業省はDXを次のように定義しています。[注2]
「DX 推進指標」における「DX」の定義
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
引用:経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンス
つまり、競争優位性の確立を目指し、データとデジタル技術を活用して既存の製品やサービス、ビジネスモデルを変革する取り組みがDXです。
ただし、国民全員が必要な医療を受けられるようにする医療制度の理念や、国民が医療機関を自由に選べるフリーアクセスの考え方から、医療DXの主な目的は「他の病院への競争優位性を確立すること」ではありません。
質の高い医療サービスをすみやかに提供するため、データやデジタル技術を活用し、病院経営の課題解決を目指すのが医療DXです。
経済産業省に先立って、2017年に厚生労働省が「データヘルス改革」の構想を発表しています。データヘルス改革とは、データやデジタル技術を活用し、医療サービスや介護サービスの質を維持・向上するための取り組みです。
厚生労働省によると、データヘルス改革には5つのゴールがあります。[注3]
※厚生労働省の資料をもとに文言をわかりやすく変更
医療DXにおいても、ITシステムの導入や既存業務の見直しにより、「サービスの質を向上させながら現場の負担を軽減する」「患者の病歴や治療歴を現場ですばやく共有できるようにする」といったゴールを目指すことが大切です。
医療DXを推進することによって、次の3つのメリットが得られます。
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
医療DXを実現すれば、病院全体の業務効率化を実現できます。具体的には、次のような病院業務を効率化することが可能です。
医療業界でも高齢化社会の進展により、医療従事者の確保が課題となっています。将来的な生産年齢人口の減少に対応するため、早い段階から医療DXに取り組み、業務改革を実現することが大切です。
医療DXを推進し、院内のさまざまなデータを有効活用することで、より質の高い医療サービスを提供できます。たとえば、問診票やアナムネ(病歴)、バイタルなどのデータをリアルタイムに電子カルテと連携するシステムを導入すれば、患者一人ひとりの個性に合わせたサービスを提供可能です。
従来の業務フローでは、患者データを電子カルテに転記する手間が発生するため、病床数が多い大病院の場合は収集したデータを有効活用できないケースがありました。
受付、病棟、各診療科、事務部門など、部門横断的に利用できるITシステムを導入することで、院内のさまざまなデータを経営改善に活かせます。
病院業務をシステム化することで、患者様の医療体験の向上も期待できます。
たとえば、タブレット画面での問診を取り入れれば、患者様が問診票に記入する手間が減ります。とくに患者様が複数の診療科を受診する場合は、その都度問診票を書かなければならないため、患者様の負担軽減のため問診票の電子化は急務です。
また、インターネットで来院前予約が可能なシステムを導入すれば、患者様が空き時間を探して受診できるようになり、診療前の待ち時間が減少します。
このように医療DXを推進すれば、「業務効率化の実現」「医療サービスの改善」「医療体験の向上」といったメリットが期待できます。解決したい経営課題に合わせ、最適なITソリューションを選ぶことが大切です。
医療DXを推進するにはさまざまな課題を解決する必要があります。
たとえば、医療DXの担い手となるスタッフや、ITシステムを使う患者様のITリテラシーの問題です。また、病床数が多い大病院の場合、関係部署での合意形成に時間がかかる点も課題となっています。
目先の利益にとらわれず、部門横断的に利用可能な院内運用システムを選ぶことが大切です。
医療DXの課題の1つが、スタッフや患者様のITリテラシーの問題です。経営課題の解決につながるからといって、高度なITスキルが要求されるシステムを導入しても、現場のスタッフが使いこなせなければ導入効果が期待できません。
また、Web問診や診療予約システムなど、患者様が直接利用する製品を選定する場合も、「画面が見やすいか」「操作が直感的でわかりやすいか」という患者様目線の視点を持つことが大切です。
複数の診療科を抱える病院の場合は、医療DXの推進にあたって院内での合意形成が課題となる場合があります。
各部署がバラバラに製品を導入し、独自にシステムを運用していては医療DXの効果が限定的になります。関係部署での合意形成を目指し、部門横断的にITシステムを導入することが医療DXのポイントです。
そもそも「医療DXの基盤としてどのようなITシステムを導入すればよいか」という点も、多くの病院関係者の頭を悩ませるポイントとなっています。
経済産業省は、ITシステムに求められる条件として次の3点を挙げています。[注2]
医療現場に置き換えれば、次の3点を満たす院内運用システムを導入しましょう。
医療DXによって経営課題を解決した事例として、病床数384の総合病院Aを紹介します。
A病院では、すでに電子カルテは導入していたものの、問診票や同意書などのその他の院内文書をペーパーレス化するシステムがありませんでした。問診票のスキャンや転記など、書類管理の手間がネックとなり、スピード感のある医療サービスを提供できないという経営課題が存在しました。
そこで、電子カルテとシームレスに連携可能な院内運用システムを導入し、タブレット画面で問診を行えるようにしました。その結果、月間622時間分の業務量を削減でき、経営課題の解決につながりました。
医療DXの基盤となるITシステムなら、iPadを活用した大規模病院向けシステムARTERIAがおすすめです。
ARTERIAには次の5つの機能があります。
問診機能 | 問診をシステム化し、問診データを自動で電子カルテに取り込む |
電子サイン対応のPDF文書機能 | 院内文書をPDFファイル化し、電子サインを用いた署名も実現 |
Web予約機能 | インターネットでの来院前予約が可能になり、待合室の混雑を緩和 |
アナムネ機能 | 患者の病歴をデータ化し、入院病棟でいつでも確認できるように |
バイタル機能 | 日々のバイタル測定結果をタブレットで記録可能にし、入力訂正の手間を削減 |
ARTERIAなら、問診機能・PDF文書機能・Web予約機能・アナムネ機能・バイタル機能のすべてで電子カルテとの連携が可能です。
特定の診療科だけでなく、病院全体で利用可能な院内運用システムをお探しの場合はARTERIAの導入がおすすめです。
医療DXとは、「データやデジタル技術の活用により、病院経営の課題解決を目指すこと」を指す言葉です。
病院業務のDXを推進することで、業務効率化や医療サービスの改善、患者様の医療体験の向上といったメリットが期待できます。
病院業務のDXを推進するときのポイントが、医療DXの基盤となるITシステムの選定です。
大規模病院向けの院内運用システムをお探しの場合はARTERIAの導入がおすすめです。受付、病棟、各診療科、事務部門など、1つのシステムで部門横断的に利用可能なため、病院全体の生産性を高めることができます。