2022.04.13
東京と大阪で「医療と介護の総合展」が年に2回開催されるなど、医療ITへの関心が高まっています。しかし、医療業界ではまだまだIT化が遅れているのが現状です。病院業務の効率化や人件費削減を実現するにはITシステムの導入が欠かせません。
この記事では、医療ITがかかえる課題や、医療機関がITシステムを導入するメリット、コロナ禍やテレワークを踏まえた今後の医療ITの動向について解説します。
目次
病院やクリニック向けのさまざまなITシステムが登場する一方で、医療業界のIT化はあまり進んでいません。たとえば、厚生労働省のホームページによると、一般病院の電子カルテシステムやオーダリングシステムの導入率はいずれも半数程度にとどまります。[注1]
システム | 導入率 |
電子カルテシステム | 46.7% |
オーダリングシステム | 55.6% |
医療業界でなかなかITの導入が進まない理由や、医療ITに特有の課題について説明します。
とくに300床以上の大病院に見られる医療ITの課題が、「複数部署での合意形成が難しい」です。
病院によっては受付と病棟、各診療科、事務部門でバラバラのシステムを使っているケースもあります。老朽化した院内システムの刷新や、最新のITシステムの導入を計画しても、関係部署の合意形成に時間がかかったり、院内で不満が出たりする場合があります。
結果としてITシステムの導入を断念せざるをえず、病院業務のIT化が進まない要因の1つになっています。
ITシステムの導入によって、既存の業務フローを混乱させるリスクがある点も医療ITの課題です。「新しい業務フローは本当に業務効率化につながるのか」「院内のスタッフだけでなく、システムを利用する患者様にとっても違和感なく受け入れられるか」を総合的に考慮し、IT化を進める必要があります。
電子カルテを導入済みの病院に見られる医療ITの課題が、「新しく院内運用システムを導入したいが、導入した電子カルテに対応していない」です。
ITシステムによっては、特定のメーカーの電子カルテにしか対応していない製品もあります。また、クラウドの電子カルテには対応していても、オンプレミスの電子カルテには対応していないシステムベンダーも存在します。
「院内のデータを電子カルテと連携して使いたい」「電子カルテと紐付けて問診や来院前予約をシステム化したい」場合は、慎重にITシステムを選定する必要があります。
ITシステムを導入すれば、病院経営のさまざまな課題を解決できます。
この3つのメリットについて詳しく解説します。
紙ベースで院内文書を管理していると、さまざまな手作業が発生します。とくに膨大な量のカルテや検査結果をあつかう大病院ほど、紙ベースの院内文書が業務効率に悪影響を与えています。
ITシステムを導入し、院内文書のペーパーレス化に取り組むことで、業務効率化を実現できます。ペーパーレス化が可能な院内文書として、たとえば次のようなものがあります。
病院業務の生産性を高めることにより、人件費削減を実現できます。
人件費削減は病院経営の重要課題の1つです。独立行政法人福祉医療機構の「病院経営動向調査(2021年12月調査)」によると、経営上の課題として59.4%の病院が「人件費の増加」を挙げています。[注2]
ITシステムを導入し、病院業務のムダを減らすことで、サービスの質を維持しながら人件費を削減できます。
新型コロナの感染拡大により、医療機関でもクラスター事例が発生しています。院内感染対策のネックとなっているのが、院内で持ち歩く紙文書です。院内文書の消毒は難しいため、患者やスタッフの院内感染リスクを高める要因の1つとなっていました。
しかし、院内文書を電子化し、消毒が簡単なタブレットなどで院内を持ち回るようにすれば、院内感染リスクを減らせます。ITシステムを導入すれば、よりスムーズにコロナ対策を実現することが可能です。
医療機関向けのITシステムは、電子カルテシステムやオーダリングシステムだけではありません。問診のシステム化やWeb予約機能など、病院業務の効率化につながるさまざまなITソリューションが存在します。
ここでは、ITシステムの導入によって病院業務の課題解決につながった事例を2つ紹介します。
384床の総合病院Aの事例では、コロナ対応にあたって次のような課題を抱えていました。
こうした課題を解決するため、A病院では問診票のペーパーレス化に取り組み、患者様がタブレット画面でWeb問診を行えるようにしました。結果として、次のような導入効果を実感することができました。
病床の規模が大きくなればなるほど、問診票のスキャンやファイリングといった書類管理の業務量が増加します。電子カルテだけでなく、問診票などの院内文書を電子化することで病院業務の効率化を実現可能です。
630床の総合病院Bの事例では、インターネットで来院前予約ができるITシステムを構築したものの、次のような理由により導入効果を実感できませんでした。
そこで、B病院では電子カルテとシームレスに連携可能な診療予約システムを導入したところ、次のような導入効果を実感できました。
診療予約システムなど、新しく院内運用システムを導入する場合は、電子カルテと連携可能な製品を選ぶことが大切です。
医療ITの重要性は、コロナ禍やテレワークの影響によってますます高まっています。
たとえば、2020年4月には厚生労働省がオンライン診療についての特例的な取扱を認め、規制緩和を行いました。[注3]
新型コロナの感染予防対策に加えて、医療業界でも働き方改革の観点から、テレワークやリモートワークの普及を目指す動きが広がっています。こうした変化に対応するには、医療ITを取り入れ、病院業務をシステム化していくことが大切です。
また、コロナ禍以前から病院経営の課題となっているのが、収益における人件費比率の問題です。しかし、日本政策投資銀行が「収益性が厳しい中、材料、システムなどについては削れない状況で、人件費が調整弁になるのは『質の確保』という意味で留意すべき」としている通り、人件費削減にはサービスの質の低下につながるリスクがあります。[注4]
病院業務をシステム化し、人件費削減とサービスの質の担保を両立させる点にこそ医療ITの役割があります。
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また、ARTERIAは導入支援サポートが充実しているのも特徴です。導入前の段階で関係部署が集まるワーキングを実施し、院内の合意形成をサポートします。患者目線での導線設計も実施するため、サービスの質を担保しながら業務効率化を進めることが可能です。
業務効率化や人件費削減など、病院経営の課題を解決するにはITシステムの導入が必要不可欠です。とくに病床数が多い大病院では、院内文書の管理に膨大な手間がかかるため、ペーパーレス化を1つの軸として医療ITを推進していく必要があります。
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