2022.12.26
病院における患者の待ち時間は、診療科によって差はありますが、1時間未満が約7割という調査データがあります。
待ち時間が長くなる主な原因は「業務効率」と「患者数」ですが、院内システムの導入による業務効率化で、患者の待ち時間の改善が可能です。待ち時間が短縮されることで患者のストレスが軽減され、病院に対する満足度を高めることも期待できます。
本記事では、病院での患者の待ち時間の平均値をはじめ、待ち時間が長くなってしまう原因、待ち時間・ストレスを減らす対策について解説します。
目次
はじめに、病院での患者の待ち時間について、以下の4つの観点から実際のデータを交えて見ていきましょう。
はじめに、外来患者の待ち時間について、厚生労働省が調査・公表しているデータから見てみましょう。
■図表:病院の種類別にみた外来患者の診察などまでの待ち時間
出典:令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況 |厚生労働省
調査結果を見ると、どの種類の病院でも外来患者の待ち時間は「15分未満」が最も多くなっていることが分かります。また、全体を見ると「15分未満」「15分~30分未満」「30分~1時間未満」を合わせた1時間未満の割合が、7割を超える結果となっています。
次に、同じ調査データから、初診時と再来時で待ち時間を比較したデータをご紹介しましょう。
■図表:病院の種類別、初診・再来別にみた外来患者 の診察などまでの待ち時間
出典:令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況 |厚生労働省
待ち時間(総数)を見てみると、初診で最も多いのが「15分~30分未満」(25.4%)、再来で最も多いのが「15分未満」(28.6%)となっています。また、1時間未満の割合は、初診で約70%、再来で約75%となっていて、再来時の待ち時間は初診時と比べて減少する傾向にあることが分かります。
続いて、外来患者が診察までの待ち時間について、どれくらい満足・不満と感じているのか見てみましょう。こちらも同じ厚生労働省の調査データです。
■図表:項目別にみた満足度(外来)
出典:令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況 |厚生労働省
図表の一番下にある項目「診察までの待ち時間」(令和2年)を見てみると、患者の満足度は以下のようになっています。
「満足」「ふつう」を合わせると73.7%となり、不満を大きく上回っています。また、過去の推移を見ると「不満」に感じている割合は、数ポイント程度ですが減少していることが分かります。
多くの外来患者は待ち時間にはそれほど「不満」を感じているわけではなさそうですが、「医師との対話」や「医師以外の病院スタッフの対応」など他の項目と比べると、待ち時間について「満足」と回答した割合が少ないことには留意する必要があるでしょう。
次に、参考まで診療科別の調査データを見てみましょう。これまで見てきた厚生労働省の調査項目にはないため、三重県厚生農業協同組合連合会 松阪中央総合病院が行った調査データをご紹介します。
診療科別の外来患者の待ち時間は以下の通りです。
診療科 | 平均待ち時間 |
---|---|
内科 | 1時間23分 |
胃腸科 | 1時間46分 |
外科 | 1時間45分 |
脳神経外科 | 32分 |
胸部外科 | 1時間34分 |
産婦人科 | 55分 |
眼科 | 14分 |
耳鼻咽喉科 | 1時間7分 |
小児科 | 26分 |
整形外科 | 35分 |
皮膚科 | 56分 |
泌尿器科 | 1時間13分 |
脳神経内科 | 51分 |
麻酔科 | 22分 |
精神神経科 | 25分 |
リハビリテーション科 | 2分 |
放射線治療科 | 30分 |
全科平均 | 1時間3分 |
出典:『令和3年度外来待ち時間調査』(松阪中央総合病院)
待ち時間が長い診療科は胃腸科や外科などで、平均的に1時間45分前後の待ち時間が生じていることが分かります。一方、リハビリテーション科は平均2分と最も短く、眼科や小児科なども短めです。
これまでに見てきた調査データから、外来患者の待ち時間は「1時間未満」であることが多い一方で、満足度という意味ではまだ改善の余地があるとも言えます。
ここからは、あらためて患者の待ち時間が長くなってしまう原因について整理して見ていきましょう。原因としては、主に以下のような3点が挙げられます。
院内のさまざまな業務量が多く、時間のロスが発生すると、患者の待ち時間にも影響します。例えば、カルテの作成、検査の予約、各種処置や薬の処方などは、時間的な負荷が高い業務の代表例です。これらに時間がとられると、患者の対応に使える時間が短くなり、待ち時間が長くなります。
待ち時間が長くなるのはもちろん患者数が多いのが一番の原因ですが、特定の時間だけ患者の待ち時間が長くなる場合、予約受付の偏りも考えられます。一般的には、1日のうちで見ると「診察開始直後」「昼休み前後」「診療終了直前」の3つのタイミングで、患者の来院が集中します。
前日夕方以降に具合が悪くなって体調が悪い人は朝一番で来院したいと考えるでしょうし、日中働いている人であれば仕事に支障が出るのを避けるために、勤務時間前後や昼休み中に来院することが多いでしょう。
緊急の処置を要する急患が入ると、予約に関係なく順番を入れ替えて対応する必要があるため、必然的に他の患者の待ち時間が長くなります。
急患が入るのは大病院に限ったことではなく、小規模な内科や小児科などでも、症状が重い患者の処置が優先されることは珍しくありません。検査を受けた患者や、予約時間に遅れた患者が出た場合も、順番が前後することがあります。
ここからは、患者の待ち時間を今よりも短縮する方法について見ていきましょう。代表的な対策として、以下の3つについてご紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
可能な限り、時間によって来院患者数に大きな偏りが出ないようにする工夫が重要です。例えば、「病院予約システム」を導入したり、予約システムと連携して、病院の公式サイトに混雑状況を掲載する仕組みを取り入れたりするのが、来院数の平準化に効果的です。
病院予約システムを導入すると、時間ごとに枠を区切って一定数の予約を受け付けるようにできます。また、患者がインターネットを介して、自ら空き時間を探して診療予約するため、待合室での待ち時間を大幅に短縮できます。
院内システムの導入によって業務効率化を図ることが、患者の待ち時間短縮につながります。院内システムには、電子カルテ、問診システム、病院予約システムなどがあります。これらのシステムを導入して連携させると、予約受付から来院時の問診票記入、カルテ作成、診療、薬の処方までの一連の手順がデジタル化でき、病院全体の業務効率の改善が可能です。
診察室や人員の不足が原因で、患者の待ち時間が長くなることもあります。診察室を増やして、医師がそれぞれの診察室を移動するのが一つの方法です。医師が診察しているときに、別の診察室に他の患者を入れて準備してもらうなど、同時並行で複数の患者の対応にあたるオペレーションにすると、待ち時間の短縮にもつながります。
また、混雑時にどうしても患者の待ち時間が長くなる場合は、人員が足りていない可能性があります。その場合は、医師や看護師、事務スタッフなど足りない人員配置の最適化が必要です。
これまでにご紹介したような対策を実行しても、患者の待ち時間を完全にゼロにすることはできません。そこで、例えば次のような対策を講じてみると、待ち時間に患者が感じるストレスを軽減できるかもしれません。
低コストかつ短期間で実現できるのが、雑誌や漫画、新聞、テレビなどを待合室に設置することです。ただし、近年ではスマートフォンを持っている人が多いため、以前より効果は低くなっています。そのため、子供や高齢者を対象とした絵本や雑誌などを用意するのがいいでしょう。
待合室やロビー、食堂などに使用エリアを限定する必要がありますが「Wi-Fi環境」を設置するのも効果的です。患者が自分のスマートフォンやタブレットで、好きなサイトを閲覧したり、動画視聴したりできることで待ち時間のストレスを軽減できるしょう。
なお、2014年に第2世代の携帯電話サービスが廃止されて電波出力が低下したことなどを受けて、医療機関における携帯電話などの使用に関する制限が緩和されています。最新の指針に沿って、Wi-Fi環境の整備を検討してみるのもおすすめです。
参考:総務省 電波利用ホームページ|電波環境|医療機関における携帯電話等の使用に関する指針(電波環境協議会)
総務省 「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)」等の公表
患者は「あと何分待たされるか分からない」ことに強いストレスを感じる傾向があります。そのため、患者が待ち時間を把握できる設備を導入すると、患者の不安や不満を軽減できるでしょう。待ち時間が長い場合は一度外出して他の用事を済ませてから戻るなど、時間の有効利用ができるので魅力的です。
待ち時間が分かるようにするためには、例えば、待合室に発券機と順番表示システムを導入し、ディスプレイに順番待ちの受付番号を表示するのも有効です。来院することなくオンラインで患者が待ち時間を確認できるシステムであれば、混雑を避けて来院時間を調整することもできます。
また、Web予約システムを導入すると、患者は待ち時間を気にすることなく予約時間直前に来院すればいいため、待ち時間をさらに短くすることにつながります。
今回ご紹介したように調査データによれば、患者の待ち時間は平均して15分~30分未満程度で、約7割が1時間未満です。人によってこの待ち時間を長いと感じるか短いと感じるのかはさまざまですが、不満やストレスを感じる患者をできるだけ少なくすることが患者の満足度につながります。
慢性的に待ち時間の「不満」があったり、さらなる満足度の改善を検討したりする際には、一つの方法として「院内システム」の導入がおすすめです。院内業務をデジタル化することで業務効率化が図られ、待ち時間の根本的な圧縮につながります。
Web予約機能を備えた『ARTERIA』(アルテリア)は、患者の待ち時間短縮にもつながる、病院業務効率化システムです。
ARTERIAを導入することで、患者はWeb上で好きな時間に診察時間の予約をとることができ、混雑状況をどこからでも確認できます。さらに、電子カルテシステムとも連携できるため、予約から予約データを電子カルテに連携する際の、入力作業を自動化・効率化することが可能です。結果的に、病院全体の業務が効率化し、患者の待ち時間とストレスの軽減にもつながります。
患者の待ち時間の短縮方法を模索している方は、ぜひARTERIAの導入をご検討ください。ARTERIAはWeb予約機能、事前問診、院内文書の通知など、待ち時間短縮に役立つ機能が豊富に備わっています。病院の業務効率化でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
■ARTERIAのWeb予約機能について以下のページでも詳しくご紹介しています。
ARTERIAのWeb予約機能