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2023.09.07

医療現場・医療従事者(医師・看護師・薬剤師・事務職員など)の働き方改革とは?ポイント解説

医療現場・医療従事者(医師・看護師・薬剤師・事務職員など)の働き方改革とは?ポイント解説

これまで医療現場では、医師、看護師、薬剤師、事務職員など、医療従事者の長時間労働が常態化してきました。しかし、こうした環境を放置することは、医療従事者の健康を損なう恐れがあるばかりでなく、人材確保の悪化や、質の高い医療サービスを提供・維持するための障壁ともなります。

そこで国は、一般業種を対象とした働き方改革の推進と合わせて、医療現場・医療従事者の働き方改革の実現へ向けた取り組みをスタートさせています。本記事では、医療現場・医療従事者の働き方改革が必要な理由や、取り組みのポイントなどについて解説します。

医療現場・医療従事者の働き方改革とは?

医療現場の働き方改革は、医師、看護師、薬剤師、事務職員といった医療従事者を対象に行われる働き方改革のことです。

働き方改革が求められる社会的背景

社会的背景を見てみると、労働力の中核となる生産年齢人口の減少や、若い世代の労働への意識の変化により、医療従事者の確保が大きな課題になっています。将来においても、医療ニーズの多様化、高齢化などの影響で、医療現場の労働環境はさらに過酷さを増すと考えられています。

また、2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行により、医療現場のひっ迫や医療従事者の疲弊が顕著になりました。このような状況の中、医療従事者の職場環境が改めて注目されています。

働き方改革による医療現場・医療機関経営の好循環

医療従事者の心身が疲労すれば、本人の健康被害はもちろん、医療過誤の発生にもつながりかねません。安全・安心な医療を持続的に提供するためには、医療従事者の労働環境を改善し、適切な勤務環境のもとで健康に働けることが大切です。

また、医療現場・医療従事者の働き方改革は、勤務環境改善による人材確保や、生産性向上やスキルアップによる医療の質の向上をもたらし、その結果、患者満足度の向上が図られ医療機関の経営安定化にもつながります。こうした好循環の実現も働き方改革が目指すところです。

そもそも「働き方改革」とは?

そもそも「働き方改革」とは、長時間労働や不合理な待遇格差を是正して、労働者にとって「働きやすい環境」をつくる取り組みを指します。

働き方改革の目的は、労働者が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるようにして、多様な生き方ができる社会を実現することです。これにより、一人一人がより良い未来への展望を持てるようになることを目指しています。

国を挙げた働き方改革への取り組みは、2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」により、すでに始まっています。働き方改革関連法のポイントは以下の3点です。

  • 時間外労働の上限規制
  • 年5日の年次有給休暇の取得義務化
  • 同一労働同一賃金(均等・均衡待遇)

時間外労働の上限規制

長時間労働は、健康への悪影響をはじめ、仕事と家庭の両立、女性のキャリア形成や男性の家庭参加を阻害する要因です。長時間労働を是正することで、ワークライフバランスの改善を図ることが大切です。

これまで法律上の時間外労働の規制はありませんでしたが、法改正により、時間外労働(休日労働は含まず)の上限規制を原則として月45時間・年360時間としました。臨時的な特別の事情がなければこれを超過できません。臨時的な特別の事情があって労使合意がある場合でも、年720時間以内など法律による上限が設けられています。

年5日の年次有給休暇の取得義務化

法定年次有給休暇の付与日数が年10日以上の労働者に対して、企業は、年5日は時季を指定して取得させる必要があることが義務化されました。これまで有給休暇は、労働者が自ら申し出て取得するしかなく、職場環境によっては「有給休暇の申し出をしにくく取得しづらい」という状況があった点を改善するためです。

同一労働同一賃金(均等・均衡待遇)

雇用形態を問わず、均等・均衡待遇を確保するため、同一労働同一賃金が導入されました。同じ企業内で働いているにもかかわらず、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パート・アルバイト、有期雇用労働者、派遣労働者)との間に、不合理な待遇差をつくることは禁止されています。

基本給、賞与、手当をはじめ、福利厚生や教育訓練などの待遇も対象です。非正規労働者から正社員との待遇の違いや、その理由について説明を求められた場合には、事業主は説明をしなければなりません。

医療現場・医療従事者の働き方改革は2024年4月にスタート

2019年に始まった働き方改革は、日本の全企業・全労働者を対象としたものですが、以下の事業・業務については、時間外労働の上限規制の適用が猶予されてきました。

  • 医師
  • 建設業
  • トラック(物流)
  • バス・タクシードライバー

しかし、この猶予期間も終了し、2024年4月からは医師にも時間外労働の上限規制が適用されます。

医師の時間外労働の上限規制が猶予されてきた主な理由は、働き方改革による労働時間の是正をすぐに適用すると、その影響で医療現場が機能不全に陥るリスクがあったことです。社会的な影響を回避するため先延ばしされた形の医療現場の働き方改革ですが、猶予期間が終わり、本格的に医療現場・医療従事者の働き方改革が推し進められることになります。

医師・看護師など医療現場の労働環境を見直すこれらの動きは「医療の2024年問題」と呼ばれることもあります。

医療現場・医療従事者の働き方改革が必要な理由

ここからは、医療現場・医療従事者の働き方改革が必要な理由について、特に「医師」と「看護師」が置かれている現状に注目して見ていきましょう。

医師の場合

厚生労働省の「ワーキンググループ資料」には、医師の長時間労働の課題が報告されています。病院の常勤医師のうち、約4割が年960時間以上、約1割が年1,860時間以上の時間外・休日労働を行っています。特に、救急、産婦人科、外科、若手医師の長時間労働の傾向が強いとされています。

医師は、慢性的な人手不足による業務負荷、オンコール、休日診療、管理的業務、学会・勉強会参加、自己研鑽など、さまざまな対応を求められており、日本の医療は医師の長時間労働で支えられています。しかし、先述したように将来的にはさらに人手不足が進み、現状維持も困難になる可能性があります。医師が健康的に働くことができる勤務環境を整え、ひいては良質な医療を提供できるようにすることは、避けては通れない取り組みといえるでしょう。

「医師の働き方改革」については、以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

■関連記事
医師の働き方改革とは?ポイント解説【2024年4月開始】取り組み事例も

■参考
良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(第31回地域医療構想に関するワーキンググループ)[厚生労働省]

看護師の場合

日本看護協会が発表した「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」では、以下のような課題が指摘されています。

  • 長時間労働が常態化
  • 業務開始時刻前の前残業、持ち帰り業務の発生
  • 勤務時間外の研修などへの参加
  • カウントされない時間外労働、未払い残業の常態化
  • 夜勤の負担
  • 職員間のハラスメント、患者やその家族からの暴力やハラスメント
  • 仕事のコントロール感が得られない
  • 能力・役割・成果に対する不公平な評価・処遇

医師とともに医療現場を支える看護師もまた、過酷な労働条件下にあることが分かります。そのため、看護師がモチベーションを維持して、本来の業務に集中できるような勤務環境の整備が必須です。

看護師のワークライフバランスが改善されれば、人手不足の解消をはじめ、患者に提供できる医療の品質が向上し、結果的に医療機関の経営改善にもつながるでしょう。

■参考
就業継続が可能な看護職の働き方の提案(公益社団法人日本看護協会)

医療現場・医療従事者の働き方改革の概要

医療現場・医療従事者の働き方改革について、以下のポイントから解説します。

  • 時間外労働の上限規制
  • 勤務環境改善マネジメントシステム
  • 看護師のワークライフバランスの改善

時間外労働の上限規制

2024年4月から始まる医療現場・医療従事者の働き方改革のメインは「医師の時間外労働の上限規制」です。先述したように一般企業では、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は月45時間・年360時間が原則で、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。医師以外の看護師や薬剤師などについては、基本的にすでにこの規制が適用されています。

一方、医師の場合は2024年4月から、時間外・休日労働時間は、原則年960時間が上限となります。救急医療や専門性の高い医療機関などもあるため、やむを得ず960時間を超えてしまう場合は、特例的に年1,860時間を上限にできる枠組みが設けられています。

勤務環境改善マネジメントシステム

医療現場・医療従事者の働き方改革に先立ち、2014年10月に「医療機関の勤務環境改善に関する改正医療法の規定」が施行されました。これは「勤務環境改善マネジメントシステム」とも呼ばれ、各医療機関がPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを活用し、計画的に勤務環境の改善に取り組むための仕組みです。

厚生労働省の「医師の働き方改革・医療従事者の勤務環境の改善について」によると、勤務環境改善マネジメントシステムは、医師、看護師、薬剤師、事務職員など幅広い医療スタッフの協力のもと、継続的な勤務環境改善で快適な職場環境を形成するものです。各医療機関の実態に合わせて自主的に行われる仕組みであり、医療スタッフの健康増進・安全確保と医療の質の向上を目指します。

また、都道府県ごとに勤務環境改善を支援するための「医療勤務環境改善支援センター」があり、専門的・総合的な支援も受けられます。

<医療勤務環境改善支援センター>(一部)
北海道医療勤務環境改善支援センター
埼玉県医療勤務環境改善支援センター – 埼玉県
千葉県医療勤務環境改善支援センター/千葉県
東京都医療勤務環境改善支援センター 東京都保健医療局
神奈川県医療勤務環境改善支援センター – 神奈川県ホームページ
愛知県医療勤務環境改善支援センター
大阪府医療勤務環境改善支援センター
福岡県医療勤務環境改善支援センター | ふくおか地域医療支援サイト

■参考
医師の働き方改革・医療従事者の勤務環境の改善について(厚生労働省)

看護師のワークライフバランスの実現

厚生労働省の「看護職員就業状況等実態調査結果」によると、看護師の離職理由として特に多いのが「出産」「育児」「結婚」といったライフイベントです。そのため、看護師の個々の事情に合わせて、多様な勤務形態を選択できるようにすることで、人手不足の解消が期待できます。

例えば、正規雇用ながら労働時間が短い「短時間正職員制度」は、ライフイベントにかかわらず看護師が働き続けやすい雇用形態として有名です。福利厚生・社会保険・育児休暇が適用される上に、昇進昇格や教育訓練などの機会も与えられます。「短時間なら働き続けられる」という看護師は多いので、理想的な制度だといえるでしょう。

■参考
看護職員就業状況等実態調査結果(厚生労働省)

医療現場・医療従事者の働き方改革を実現するポイント

医療現場・医療従事者の働き方改革を実現するためのポイントとして、以下のような点が挙げられます。

  • 労働管理・勤務管理を整備する
  • タスク・シフト/シェアを実行する
  • ICTシステム・ツールを導入する

労働管理・勤務管理を整備する

医療従事者の長時間労働を是正するためには、労働管理・勤務管理の整備が欠かせません。そこで、最新の勤怠管理システムを導入し、勤務時間を厳格に管理するようにしましょう。勤怠管理システムを導入することで、出退勤時刻や残業時間はもちろん、休暇の取得やシフト状況なども一元管理できるようになります。一人一人の勤務状況を可視化でき、院内全体の労務状況の把握・分析も可能です。

タスク・シフト/シェアを実行する

タスク・シフト/シェアは、特定の人や職種に集中しているタスクの一部を他の職種(スタッフ)へ移管して、業務負荷の軽減を図ることを指します。例えば、医師の担当業務の一部を看護師や薬剤師、もしくは事務職員に任せるなどです。

ただし、タスク・シフト/シェアを行うことで、かえって他のスタッフの労働環境が悪化してしまっては本末転倒になります。業務範囲の明確化やスムーズな連携が必要になるため、適正な計画に基づいた実行が大切です。

ICTシステム・ツールを導入する

医療現場・医療従事者の働き方改革の実現、および医療の2024年問題を解決するためには、ICTシステムやデジタルツールの導入がおすすめです。ICTとは「情報通信技術を活用したコミュニケーション手法」を指します。

医療現場・医療従事者向けのICTシステムとして、例えば、電子カルテシステムや電子問診票(タブレット問診票)、診療Web予約システムなどが挙げられます。こうしたICTシステムを導入することで、院内業務が効率化されて医療従事者の長時間労働を改善できるだけでなく、医療過誤の防止や医療の品質の向上も期待できます。

医療ICTについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

■関連記事
医療ICTとは?ICT化の現状や今後の課題、導入時のメリットなどを解説

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2024年4月から本格化する医療現場・医療従事者の働き方改革により、医療機関は医師、看護師、薬剤師、事務職員など、医療従事者の労働環境の改善に努める必要があります。適切な労務管理やタスク・シフト/シェアなどで長時間労働を是正することは、院内業務の効率化にもつながります。

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