2023.09.07

病院クラウド・医療クラウドとは?病院経営や現場にもたらすメリット解説

病院クラウド・医療クラウドとは?病院経営や現場にもたらすメリット解説

「病院クラウド(医療クラウド)」は、インターネット上でITシステムが利用できるクラウドサービスを、病院・医療機関で導入することを指します。病院クラウド・医療クラウドを採用することで、医療システム導入にかかわる運用コストの削減や、院内システムのスムーズなデータ管理や共有が可能になります。

しかし、クラウドというと専門的なイメージがあるため、「具体的にイメージできない」「分かりづらい」ことも多いのではないでしょうか。そこで本記事では、病院クラウド・医療クラウドの基礎知識をはじめ、導入メリット、代表的な医療システムについて分かりやすく解説します。

病院クラウド・医療クラウドとは?

病院クラウド・医療クラウドとは、医療現場で「クラウドサービス」を導入・活用することを指します。病院クラウド・医療クラウドについて、まずは概要を見ていきましょう。

そもそも「クラウド」とは?

「クラウド」とは、インターネット上でアプリやサービスを利用できるサービス形態のことです。クラウドサービスを導入すると、医療機関が自前で複雑なシステムやサーバーを構築しなくても、インターネット経由で高度なITシステムを利用できるようになります。

また、インターネットを介した利用が前提となっているため、接続環境さえあれば、院内はもちろん外出先でノートパソコンやタブレット端末からでもアクセスできます。

ちなみにクラウドは「雲」を意味し、インターネットを雲にたとえて「見えないところからサービスが提供される」ことを表現したものです。クラウドサービスでは、システムの実体やデータは医療機関内ではなく、すべてベンダー(サービス提供側)のサーバーで運用・管理されます。そのため、システム保守など技術的なメンテナンスについて心配する必要がありません。

端的に表現するのであれば、自前でシステムの開発や運用を行う必要がなく、「必要なときに必要な分だけサービスを利用できる仕組み」だといえるでしょう。

医療システムやデータ管理のクラウド化が広がっている

病院クラウド・医療クラウドは、先述したクラウドサービスを医療機関で活用することを指します。例えば、電子カルテや医療画像のクラウド化はその代表例でしょう。患者データをクラウド環境で管理すると、アクセス権限を持った担当者であれば、必要なときにいつでも情報を取り出せるようになります。

従来の手法では、膨大な紙のデータをキャビネットなどで物理的に管理したり、高額なコストと手間をかけて医療機関内のサーバーで管理したりする必要がありました。しかし、病院クラウド・医療クラウドの活用で、こうしたデータ管理の手間やコストを大幅に削減できます。

これからの医療業界で重要になる「働き方改革」や「ITデータ利活用」に、病院クラウド・医療クラウドは欠かせない仕組みといえるでしょう。

病院クラウド・医療クラウドが重視される理由・背景

病院クラウド・医療クラウドが重視される理由・背景として、以下の3つのものが挙げられます。

  • 医療機関の業務効率化が求められている
  • 電子カルテの普及が急速に進んでいる
  • 医療機関同士や地域間の連携を促進できる可能性がある

医療機関の業務効率化が求められている

近年、医療機関における業務効率化の必要性が高まっています。医療機関によっては、人手不足などで長時間労働が常態化し、その解決への取り組みが喫緊の課題です。また、生産年齢人口の減少による医療従事者の人手不足の深刻化に対応するためにも、医療業務の効率化が欠かせません。

病院クラウド・医療クラウドで医療のデジタル化を推進することで、これまで手作業で行っていた院内業務を効率化できるため、医療従事者の業務負荷を大幅に軽減できます。

現在、国により推進されている「医師や医療従事者の働き方改革」については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

■関連記事
医師の働き方改革とは?ポイント解説【2024年4月開始】
医療現場・医療従事者(医師・看護師・薬剤師・事務職員など)の働き方改革とは?ポイント解説

電子カルテの普及が急速に進んでいる

電子カルテの普及が急速に進んでいることも、病院クラウド・医療クラウドが注目される理由です。以前は電子カルテの導入・運用には高額な費用が必要でしたが、クラウドサービスの普及により低価格で利用できるようになりました。

電子カルテと合わせて、診療予約システムや問診システムもクラウド化することで、院内業務をトータルで効率化し、患者の満足度向上や院内業務改善などのデータ利活用に役立ちます。

なお、電子カルテと他の院内システムとの連携は、電子カルテのリプレイス(入れ替え)時期が最も効果的なタイミングです。詳しくは以下の記事で解説していますのでご覧ください。

■関連記事
電子カルテのリプレイス(入れ替え)タイミングは?データ移行方法や選び方も解説

医療機関同士や地域間の連携を促進できる可能性がある

あらゆる業界でIT化が推進・普及していますが、医療業界でも「データ利活用」の重要性が高まっています。医療のデータ利活用で特に大きな課題になっているのが、医療機関同士や地域間での連携体制です。

現在、医療現場では診療・治療から事務にいたるまで、さまざまな分野でIT化・デジタル化が進んでいます。しかし、それぞれのシステムが独立している傾向があります。そのため、システム間でデータ連携が十分にできておらず、電子カルテのフォーマットも規格統一がなされていません。

こうした背景から、医療機関同士あるいは地域間で、医療データの共有・連携が難しい状態が続いていましたが、クラウドを活用することで基盤システムが共通のものとなり、連携がスムーズに行えてデータ利活用が容易にできるようになります。

病院クラウド・医療クラウドを導入するメリット

病院クラウド・医療クラウドを導入することで、医療機関は以下のようなメリットを得られます。

  • システムの導入・運用コストを削減できる
  • データ容量の心配をする必要がなくなる
  • データ管理と共有がスムーズになる
  • BCP(事業継続計画)を確保できる
  • システムのメンテナンスや更新が容易になる

システムの導入・運用コストを削減できる

クラウドサービスは、自前でシステムを構築しなくていいため、システム開発のコストを抑えられます。従来のオンプレミス型(自前でサーバーを用意してシステムを構築する形態)のITシステムは、高額な初期費用やメンテナンスのコストが必要でした。

その点、インターネットを通じて利用できるクラウドサービスは、基本的には保守点検も含めた月額料金制なので、お手頃価格で中長期的な運用ができます。また、すべての情報がデジタルデータになれば、従来の紙の問診票やカルテといった書類の印刷・保管にかかるコストを大幅に削減可能です。

ITシステム導入による病院経営の課題・改善については、以下の記事も合わせてご覧ください。

■関連記事
病院経営の課題はシステム導入で改善できる!事例やおすすめシステムを紹介

データ容量の心配をする必要がなくなる

医療現場では膨大な情報を扱います。例えば、CTスキャンなどの画像診断では高解像度の医療画像を多く撮影するため、データを保存するための「ストレージ」の容量が十分にないといけません。医療機関内に自前のサーバーを設置する場合は、必要に応じたストレージの拡張が困難なことが珍しくありません。

しかし、クラウドサービスでは、データはベンダーのサーバーで管理され、必要なストレージ容量に応じた利用契約が可能です。必要なストレージ容量が大きければそれだけ利用料金は割高になりますが、「まずはスモールスタート方式で、必要になったらデータ容量を足していく」といった利用方法がとれるので、過不足の発生しない効率的な運用ができるでしょう。

データ管理と共有がスムーズになる

情報の共有と連携が容易にできることも、病院クラウド・医療クラウドの大きな魅力です。紙媒体で管理された情報は、リアルタイムの情報共有が困難です。一方、クラウドでデジタル化されたデータは、すぐにほかの医療従事者や部門と連携できます。

また、病院クラウド・医療クラウドでは、医療機関外からでも情報にアクセスできることもポイントです。強力なセキュリティ体制があることが前提ではありますが、訪問医療でタブレット端末からシステムにアクセスすることや、ほかの医療機関や自治体との情報共有もスムーズに行えます。

このように、医療のデジタル化は病院・医療機関に大きなメリットをもたらします。その詳細については、以下の記事で解説していますのでご覧ください。

■関連記事
医療デジタル化のメリット・デメリットとは?医療DXの歴史や課題も紹介

BCP(事業継続計画)を確保できる

「BCP(事業継続計画)」を確保できることも、病院クラウド・医療クラウドの魅力です。

先述したように、クラウドサービスではすべてのデータをベンダーのサーバー上で保管できるため、万一の際の「データ損失」のリスクを防げます。自前でサーバーを運用してデータ管理をしている場合、例えば、自然災害が発生したときなどには、サーバーを設置した部屋が物理的な被害を受ければデータが失われる恐れがあります。

クラウドサービスを利用すると、あらゆるリスクを想定して対策がとられた安全なサーバー運用環境が整備されているため、仮に医療機関が被災したとしても、重要な患者データを維持することが可能です。

こうしたBCPは、医療機関の運営を継続するためにも極めて重要な概念なので、データの安全性の観点でもクラウドシステムがおすすめです。

システムのメンテナンスや更新が容易になる

クラウドサービスでは、バージョンアップやメンテナンスも簡単に行えるため、システムの運用そのものが容易になります。また、サーバーの保守点検も基本的にベンダー側が行うため、医療機関側はITの専門的な部分を意識する必要はありません。このように、必要な機能を気軽に利用できることが、病院クラウド・医療クラウドの魅力です。

医療や病院のクラウド化に適したITシステム

医療や病院のシステムをクラウド化するのに適したITシステムとして、以下の4つのものが特に注目を集めています。

  • 電子カルテ
  • Web予約システム
  • Web問診システム
  • オーダリングシステム

電子カルテ

「電子カルテ」は、診療内容や治療経過などを医師が記録するカルテを、電子化するためのITシステムです。カルテを電子化することで、紙のカルテの記入や転記の手間を軽減できます。システムによっては診療予約や問診などの他システムとも連携できるため、医療従事者の業務負荷の軽減にもつながります。

Web予約システム

「Web予約システム」は、Webサイトやアプリなどを通じて、患者がインターネットから診療予約できるシステムです。患者が自ら空き時間を閲覧して予約を入れられるため、受付や電話対応をする担当者にとって大きな業務軽減になる上、患者側もわざわざ来院して待ち時間を確認する必要がなくなります。

Web予約システムの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

■関連記事
【医療機関向け】病院のWeb予約システムとは?種類と選び方のポイント

Web問診システム

「Web問診システム」は、患者が来院時に、症状・既往症・服用中の薬などについて問診票に記入するものです。これまで、患者の問診内容は手作業でカルテに転記する必要がありました。しかし、システムによっては問診データが自動的に電子カルテと連携されるので、スムーズに診療へ移れます。

電子問診システムを導入するメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

■関連記事
電子問診システムを導入するメリットは?検討すべきポイントも解説

オーダリングシステム

「オーダリングシステム」は、医師が看護師や薬剤師に行う指示を管理し、関係部署へ連携するシステムです。例えば、処方箋の作成は、ヒューマンエラーが起きやすい工程です。電子カルテと連携させると、処方ミスを防ぐためのチェックがシステム上で行え、安全な診療体制の構築に役立ちます。また、オーダリングシステムに蓄積したデータは、ビッグデータとして処方の最適化や研究開発に活用可能です。

病院クラウド・医療クラウドで医療のデジタル化を進めよう

医療システムのクラウド化は、院内業務の効率化やコスト削減、患者の利便性向上など、患者・医療従事者・医療機関すべてにとって魅力的な仕組みです。また、医療データの連携やその利活用の面でも、大きなメリットを社会にもたらすものとして期待されています。

WorkVisionの病院業務の効率化システム『ARTERIA』(アルテリア)は、医療のデジタル化や効率化に最適です。クラウド型のシステムで、問診票や同意書など院内文書のペーパレス化(電子化)診療予約のオンライン化など豊富な機能を備えており、既存の業務フローを変えず気軽に導入できます。医療システムのクラウド化の一環として、この機会にぜひ導入をご検討ください。

■ARTERIAの特徴は以下のページでも詳しくご紹介しています。
ARTERIAが選ばれる理由

関連記事